2012年2月9日木曜日

讃岐うどん 「四国屋」


 甲州街道から続く中野通りに「十貫坂上」というバス停があります。その三叉路近くに讃岐うどん「四国屋」があります。ここに通い始めて何年になるのかなあと思い、勘定してみました。僕の主催している「日本骨董学院」の教室が代々木にあった当時、帰りの道すがらに発見したことを覚えていますから、かれこれ10数年になると思います。
  僕は天ぷらとか揚げ物が好きですから、この店での初めての注文も「掻き揚げうどん」でした。店構えからして美味しそうだと言う直感が正しかったのは、最初の一口で証明されました。びっくりしたというのが正直な感想です。先ずレンゲでスープを味見するのが僕の習性ですが、この瞬間から、もう感激でした。揚げたばかりの「かき揚げ」の香ばしさが口の中にひろがり、透明なカツオダシの深みのある味に感動しました。本当に心からホッとするような、優しさ溢れる味です。讃岐地方にも美味しい店はあるのでしょうが、僕がこれまでにいただいた讃岐うどんより何倍もおいしいです。食べ物は、実際に味わわなければ解らないので、これは一度是非賞味していただきたいと思います。味覚は人それぞれ。世に名だたる店も自分の舌が納得してこそです。

 掻き揚げに入っている具は何しろ新鮮ですから、見るからに食欲をそそります。プリプリ海老がまた絶品。注文を受けてから揚げるので、ゴボウもタマネギも、素材の旨味を生かし切っています。しゃきしゃきの揚げたてを、コシのある手打ちうどんと滋味溢れるスープとともにいただく、この幸せ!タコ絶賛の至福の「讃岐うどん」です。「四国屋」に通うようになって、四国宇和島から空輸している「じゃこ天」がトッピングとして抜群に相性がよく、美味しいと知りました。最近ではこの揚げたてじゃこ天を入れた掻き揚げうどんをいただいています。
 もうまさに10年一日のごとく「掻き揚げじゃこ天トッピング」を注文する僕は、席に付いたらお店の方から、「いつもの」ですね、と言われるくらい、すっかり馴染みになりました。
 「四国屋」ではもちろん他にも色々メニューにあり、どれももちろん美味しいと思いますが、僕は最初からこの一品。迷うこともありません。値段はじゃこ天トッピング入りで1250円です。気前よく量が多いので、僕は少し麺を少なめにしてもらっています。それから、お漬け物もとても美味しいです!

 「四国屋」はご主人と奥さんだけで切り盛りなさっているので、混むとお二人とも大変です。しかし、どんなに忙しくても手を抜くことはありません。驚いたことに、ご主人が天候をみながら打つといううどんは、本当にコシががあって舌触りがいい。汁にからんで、思わず「うまい」と叫んでしまうほどなのです。まさに、身を削るようにして作られるうどんですが、気張った雰囲気は微塵もありません。このご夫婦のホンワカした人柄でとてもリラックスできるお店です。「四国屋」のご夫妻には是非これからも体調に注意されて、頑張っておいしい讃岐うどんを提供し続けて欲しいと願ってやまないタコなのです。

  営業時間:昼は午前11時から午後3時 夜は午後6時半から11時
  電話:03-3380-4598

日本骨董学院 http://www.kottou-gakuin.com/

2012年2月6日月曜日

大好きな猿投長頸瓶について

 僕の好きな作品の一つです。

 愛知県共済のインターネット講座で、1年(12回)の予定で執筆している「わび・さびについて」の5回目でこの作品について触れました。
 形もよく、窯の中で焼かれた時に隣の作品が倒れかかってきたのか、左に大きく傾いていますが、それが何とも愛らしく、「いい作品だなあ」とつくづく思います。

 日本に須恵器の元になる黒い還元焔焼成のやきものが伝来したのは、弥生時代が終わり、古墳時代が始まって間もない5世紀といわれています。朝鮮半島からの最新のやきもの技術が入ってきたのですから、それは権力者のやきものであったのでしょう。

 それまでのやきものは縄文土器や弥生土器のように、たき火の大がかりなものの中で焼かれたと考えればよいと思いますが、野焼きというレベルでの焼成でした。

 ところが渡来人たちのもたらしたやきものの技術はより高度なものでした。窯を使い、高温で焼成する技術はそれまでの日本にはないものでした。ろくろも使うので美しく仕上がるから尚更貴重なものでした。その多くは副葬品、すなはちあの世へのお供として埋葬されました。

 この作品は8世紀の半ばから後半にかけて、愛知県猿投山近辺で焼かれたと考えられます。まだ猿投の釉薬の発見される前であり、形に朝鮮の統一新羅のやきものの面影がみられます。たとえば口の形状とか、胴体全面に波状文が施されています。この作品はかなり前に懇意の骨董商の方から購入しましたが、野の花などの和花を差してみると、とても良く映えるのです。こんなとき、日本の花は美しく可憐で、品があり奥ゆかしく本当にすばらしいと改めて思います。

 釉薬が前面に垂れて、それもちょうどいいところで自然釉の流れが止まっている。これはまさに「神の業」というしかありません。「神々しい作品だなあ」と思います。ゆがみも自然、釉の流れも自然、投げ込む花も自然。自然という日本文化の源流にふさわしい作品といえます。いつまでも手元に置いて楽しみたい作品の一つです。猿投はとても渋いので、その良さは写真ではなかなか伝わりにくいかもしれません。しかし、日本人の美意識の根底にあるものですから、実物を手にすれば、きっと魅かれることでしょう。そこから、やきものをより深く楽しめるようになります。

 さて先日猿投に関するテーマの講座を行った際も、この瓶を鑑賞作品の一つとして生徒さん達に御覧いただきました。外は強風で大変寒かったので、熱いお茶のお供に「雪の華」と名の付いたお干菓子をお出ししました。和三盆は柔らかみのあるおいしいお菓子で、大好きです。淡くて、きれいで、かわいいお菓子です。中皿なので、奇数などのお約束事に捕らわれず、皆様に気軽に召し上がっていただけるように、タコ流・自由に並べてみました。中国南宋時代の龍泉窯の青磁輪花十二弁花皿です。意図して集めたわけではないのですが、知り合いのお店で一枚、露店のあちらで一枚、こちらで一枚と状態の良いものを買っている内に、3枚同じデザインが揃いました。五枚揃えたいですね。これも実は南宋官窯の色合いに近い名品なのです。同じと言っても、もちろん厚みや出来映えがほんの少しずつ異なるところがまたおもしろいです。

日本骨董学院 http://www.kottou-gakuin.com/