2012年4月7日土曜日

北島康介とイチローの「勝利」を結ぶもの


 ロンドンオリンピック選手選考会を兼ねた全日本水泳選手権大会が行われました。北島康介のロンドンオリンピック100メートル、200メートル出場はかなうか?タコはかたずをのんでテレビ画面を注視していました。結果は100メートル日本新記録、1位でパス!200メートルでも新人のライバル立石選手を押さえてみごと1位パス!タコは感動しました!
  北島選手は、高校生の頃からいい「面がまえ」をしてました。シドニーオリンピック前に中央線の電車の中で、彼の小さな広告写真を見たとき、この子はいける、と確信したものです。予想はその後、的中しました。
 5歳から水泳を始め、2000年シドニーオリンピックに初出場。結果は4位入賞。メダルこそ逃したものの、その悔しさをバネに2004年アテネオリンピックでは100m・200m平泳ぎで金メダルを獲得。2008年北京オリンピックでも両種目で金メダルを獲得し、競泳での日本人初となる2種目2連覇を達成しました。すなはち4個のオリンピック金メダルを獲得したのは周知の通りです。そのチャレンジは今でも続いています。
 かつてやはり同じ金メダリストの背泳選手は100m背泳ぎで金メダルをとって、すぐ引退しました。その時、タコは非常にがっかりした覚えがあります。多くの人たちの思いも同じだったのではないでしょうか。いろいろな利害、事情、個人の考え方があると思いますが、スポーツでも、生活においても、仕事においても更なる自分へのチャレンジこそが大切なのではないか。それを学ぶのがスポーツなのではないか?と思ったからです。

 そんなタコの観るところでは、北島康介は3つの点でその引退した選手より評価できます。
 その1は、29歳の北島が自分の体力の限界にチャレンジしていることです。20歳を過ぎると減退する一方といわれる体力。それを補うのは大変なトレーニングが必要です。まして29歳です。オリンピックは4年に1回、水泳は最新鋭水着やテクニックだけではおぎなえません。北島の平泳ぎでは「キック」の持続力が最重要課題です。
 その2は、北島が若手の台頭、特に大学生の若いライバル立石選手に立ち向かい、一度は負けてもその敗戦を跳ね返したことです。一時は若手たちに惨敗を喫し、4位に甘んじたことがありました。今回はそうしたイメージをすべて払拭しました。22歳のライバル立石選手に勝ったことは大きいです。北島はレース後に立石を叱咤しました。お前が頑張れば俺ももっと頑張れる。そういう北島にはすでに王者の風格が感じられました。
 その3は欲望の誘惑に克(か)てたことです。げすな推測にすぎませんが、金メダル1個取ると、ライバルに負ける自分を考えたくない、特に惨敗を考えたくないと思うのかも知れません。次の四年後のオリンピックまでの辛い練習に耐えられるだろうか、仮にオリンピックで若いライバルに惨敗などしたら、もう立ち上がれなくなるのではないか?世間の彼を観る目も後退するだろう。金メダルを取った今が自分を売り込む最大のチャンス。そんなチャンスはもう来ないかもしれない・・・ 中にはスポーツ連盟の理事への道や、大学教授への道を考える人たちもいるといいます。また勝者への誘惑もいろいろ多いと聞きます。もういいか?ここが選手としての引き際か、と考えるのは生身の欲をもった人間である以上、仕方ないかも知れません。まわりから見ている野次馬は、栄冠を得た後すぐ引退する選手をみなそうみてます。選手は人それぞれの責任での人生だから、どう判断しても自由です。しかし冷静に観ている人はそこをジッと観ています。

 この3つの北島の「勝利」は若いのにすごいと思います。北島康介はそのものすごいプレッシャーに打ち克ちました。一度は負けた若いライバルも見事に下しました。自分にも克った。200メートルでの勝利後、インタビユーで下町育ちの北島はいつものようにテレた表情をしていました。「なんにも言えねー」。よく見ると彼の目には光るものがありました。それが苦しさを乗り越えた実感だったのでしょう。北島は「男」だ・・・ロンドンでも頑張れ、タコはそう思いました。

 そしてもう一人、「男」と言えばイチローです。彼は2009 ワールド・ベースボール・クラシックに打撃不振であったにもかかわらず出場し、そのときはずっと打てなくて胃が痛くなるほど悩んだそうです。しかし、土壇場の決勝戦の延長で韓国代表・林昌勇はそんな不振のイチローに油断した。上目の甘い球を投げた。イチローは見逃さずセンターに劇的な値千金の決勝打を放ち、日本代表の連覇に大きく貢献したことは記憶に新しいです。イチローをして、そのプレッシャーはものすごかったと言わしめたほどです。だからこそ日本中が拍手と歓声でわいたのです。純粋な前向きな努力に神は報いるんだとタコは思いました。やはりイチローはプロだ。
 イチローのライバルのM選手がワールド・ベースボール・クラシックに出場辞退したこととの違いは雲泥の差です。調子の善し悪し、怪我の確率はイチローだって同じです。現在、M選手がアメリカメジヤーリーグで契約外通告され、雇ってもらえる球団もなく浪人しているという噂を聞くと悲しいものがあります。なぜそんなことになったのか?それは明らかです。
 Mに日本に帰れとの声も多いと聞きます。しかしここで踏ん張り、再起をはかり、メジャーにリベンジできるかがM選手の評価の別れ目になることでしょう。

 日本人のこころというか、計算ずくではなく、ひたすらなチャレンジ精神に誰でも拍手喝采を送るものです。タコもふくめて観衆とはそうしたものです。アメリカでもそれは同じでしょう。それが現代の「英雄」というものの姿であり、人々に感動と勇気を与えるのです。プロスポーツはそうあるべきです。プロには金が絡みますが、それは人生を賭けてまっしぐらに努力する報酬としての金銭です。八百長は問題外ですが、人々の期待するスポーツの背後には、真摯で利害を無視して突き進む、そうした純粋性、すなはち自分へのチャレンジ精神が実は求められているのです。それが人を深く感動させるからです。相撲も力士が真剣に取り組めば、おもしろくなります。奢り、思い上がりは自分をダメにします。これはタコの自戒のことばでもあります。少なくともこれからスポーツに邁進したいとあこがれる子供たちにはそうあって欲しいと思います。
 北島康介、イチローの2人にはまだまだ頑張ってほしいと思うタコの気持ちには、そうした希望があるからなのです。

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