2012年3月16日金曜日

「世界最古の動物壁画3D 忘れられた夢の記憶」   ショーヴェ洞窟壁画 32000年前のすばらしい絵画



タコによるショーヴェ洞窟壁画のデッサン
僕にとって、初の3D映画体験は、かれこれ5-6年ほど前の大英博物館でのことでした。それは、ミイラの胎内に入る映画で、カルナック神殿の上を飛ぶ立体感に目が回るような驚きと錯覚を覚えたものです。今では3D映画の公開数もかなり増えていますが、大半はアクションやアニメなど娯楽映画を中心としているようです。そんな中、今回観た記録映画、「世界最古の動物壁画3D 忘れられた夢の記憶」の真面目な取り組みに方に感動しました。1994年に南フランスで洞穴学者・Jean-Marie Chauvetにより発見されたことから、ショーヴェ洞窟と呼ばれる閉ざされた空間をじっくりと見せてくれます。外気や二酸化炭素による浸食を防ぐ為、一般には非公開となっている洞窟内の3万2千年前の壁画について、限られた期間内に、厳選された学者と技術者のみに調査と撮影を許可して作成されたドキュメンタリーです。
 他の旧石器時代の壁画では、馬や牛、トナカイ等の絵が一般的なようですが、ショーヴェ壁画には、現在では絶滅した種も含む、ライオンや豹、熊、ハイエナ等の猛獣やフクロウ、サイまで描かれているのも特徴です。絵そのものに動きがあり、動きのコマがダブって描かれたり、まさに現代アニメに肉薄する、ないしは現代アニメ以上の素朴さ、力強さ、アイデア、迫力をもっています。バイソンなどの線の美しさ、表現方法は比類なく、この絵を描き上げた太古の人(一説にはネアンデルタール人とも考えられています)の素朴な感性の素晴らしさを十分にあらわしています。3Dだけあって立体感があるから、見応えがあり、制作意図は成功しています。素晴らしいの一言につきます。描いた太古の芸術家はたいまつを片手に、もう片方の手に持った筆ともいえる何本かの太さにの違う枝の先にたいまつの火をつけては消し、その炭を擦りつけながら自在に描いたのでしょう。自分の頭の中の動物の姿を思い浮かべながら描いたのです。
 動物の絵以外にもおもしろい壁画があります。同人物の手形が集中的にあしらわれている場所です。なんと、「吹墨の技法」、すなはち置いた手に上から顔料を吹き付けて手を白く抜く技法も使われています。これは驚嘆すべきことです。それは文字のない時代の芸術家のサインのつもりなのか、呪術的な意味合いなのかわかりませんが、狩りの豊饒、豊かさを祈っての絵画であることは間違いありません。芸術的な約300の絵画が残されている点から現代的な意味においても特筆すべきものです。2012年3月3日から3週間限定で六本木ヒルズ等TOHOシネマ系で上映中ですが、3月16日で終了するところもあるようです。
この映画の公式サイト: http://www.hekiga3d.com/

映画をご覧になれない方も、日本語その他様々なサイトでショーヴェ壁画をご覧になれます。英Chauvet Cave,、仏La Grotte Chauvetでも検索してみてください。

フランス政府によるショーヴェ洞窟の公式サイトhttp://www.culture.gouv.fr/culture/arcnat/chauvet/fr/
フランス語のwikipedia http://fr.wikipedia.org/wiki/Grotte_Chauvet
英語のwikipediahttp://en.wikipedia.org/wiki/Chauvet_Cave

日本骨董学院 http://www.kottou-gakuin.com/

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