ドイツに来て初めての快晴。いい気持ちの朝、いつものように早めにホテルの朝食をすませ、鉄道でヴァイセンフェルス(Weissenfels)で乗り換えて、哲学者ニーチェ(Friedrichi Nietsche)の生家と墓をレッケン(Roecken)に訪ねました。
その後、ライプチヒに戻り、聖トーマス教会へ。バッハが1723年から1750年まで音楽監督(Thomaskantor)を務め、あの有名な「マタイ受難曲」や年間50曲平均の作曲と演奏を行ったことで知られる教会です。
僕は高校の時にコレルリの合奏曲が好きになり、その流れで ビィバルディーやバッハを聴くようになって、そこから急速にバッハに魅かれました。特に無伴奏チェロ組曲や無伴奏ヴァイオリンソナタは大好きです。
その他どのようなバッハの曲も好きですが、ヴァイオリンがレオニード・コーガンでチェンバロがカール・リヒターの「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」などはとりわけすばらしい曲だと思います。ブランデンブルグ協奏曲も好きでレコードを収集しました。現在まで詳しいリストを作成してませんが、この曲だけで、指揮者・楽団の違う古今のSPからLPレコードまで100セットはあると思います。
祭壇前のバッハの墓にお参り |
今回はそのバッハが活躍した念願の聖トーマス教会を訪れ、彼の墓に詣でることができました。教会の祭壇前の質素でバッハらしいお墓です。13年間連れ添った最初の妻に先立たれた後、再婚したアンナ・マグダレーナは16歳年下でしたが、貧しい生活の中、献身的にバッハを支えたとのこと。きっとお裁縫もせっせとしたのでしょう。彼女の小さな指ぬきも一緒に埋葬されていました。
聖トーマス教会は思ったより小さく、横にはバッハの立派な銅像が立っています。
偶然、トーマス教会合唱団とオルガンの演奏会がその日4時からあると聞いて、急いで申し込むと席がとれました。夜にはメンデルスゾーン記念ホールでのライプチヒ弦楽四重奏団の演奏会に行く予定でしたが、まだ十分時間がありました。
トーマス教会合唱団(Thomanerchor)は、市内最古の音楽団体です(1212年創設)。その歌声はまさに天使の歌声!(^^)! 教会の空間に響いてとてもきれいでした。曲はもちろんバッハのカンタータが中心でした。
聖トーマス教会の音楽をたっぷりと堪能して、8時開演の弦楽四重奏を聴きにゲバントハウスのメンデルスゾーン・ホールに向かいました。
夜で暗かったのですが地図を頼りになんとかわかりました。かなり早く着いたのですが、すでに会場には担当者がいて、案内してくれました。「どこから来たのですか?」「日本からです」「おお、それはありがとうございます。それでは一番前の真ん中にお座りください」ということで最高の席に案内されました。こんなに間近にコンサートで座ったことはありません。演奏者から2メートルくらいの席です。 今夜のテーマは 「ライプチヒ弦楽四重奏団 週末の室内楽の夕べ」 と題して、曲目は以下の通りです。
アマデウス・モーツアルト 弦楽四重奏 KV465
アンドレアス・ロムベルグ 弦楽四重奏 NR.2
フランツ・シューベルト 弦楽四重奏 D804 (ロザムンデ)
演奏者は
ヴァイオリン:Stefan Arzberger
ヴァイオリン:Tilman Buening
ヴィオラ :Ivo Bauer
チェロ :Matthias Moosdorf
ライプチ弦楽四重奏団の当日の入場券 |
ライプチヒ弦楽四重奏団は1988年にあのフルトヴェングラーで有名なゲンバントハウス・フィルハーモニーの中から選りすぐりの四人によって結成された弦楽四重奏団なのです。 僕はゲバントハウス・フィルのコンサートを聴きたいなと思ってインターネットで調べたところ、この近辺の日程では演奏会がなくて、弦楽四重奏があるのを見て予約したのです。それも非常に安くて、15ユーロ、日本円に換算して1600円弱という金額でした。世界的な弦楽四重奏団の演奏がです。楽しみにしていました。しかも一番前に座らせてもらったのですから。
演奏は思った通りに素晴らしいものでした。まるで僕のために演奏してくれているかのようです。一番前の真ん中ですから前に観客がいないのですからそう思うのもしかたありません。やはりこの迫力と音質は感動ものです。我を忘れる夢のような2時間があっという間に過ぎました。タコ大満足。ライプチヒの人たちは幸せだなぁと思いました。こんなに素晴らしい世界的な演奏者たちの演奏会を気軽に、安価な金額でいつも楽しめるのですから・・・。
帰りにあまりの空腹だったので、ゲーテゆかりの地下酒蔵、アウアー・ケラー(Auer Keller)で軽く食事をとることにしました。
この酒場はゲーテの時代(18世紀中ごろから19世紀初めころ)からライプチヒ大学の学生たちに愛されて現在に至ります。ゲーテの代表作「ファウスト」にも登場します。こんなに古い酒場は日本にはありません。
ケラーですから地下の酒場なのですが、1階の店の入り口にメフィストがファウストを酒場に誘っている場面の銅像があります。(写真左)
ケラーに来たからにはビールを注文せねばならないのですが、ここの名物のオニオンスープを注文し、バンベルグのラオホビールはないかと聞いてみました。
ここはライプチヒだからライプチヒのビールを飲めといって笑うので、では任せるからうまいのを頼む、と言うとヤボール「Jawohl」(もちろん)との返事。なかなか気持ち良い、フロア主任風のいい男です。早速運ばれてきたのが、樽から注がれたばかりの、まさに生ビール。「ウ~、うまいっ!」あまりのうまさについ声に出てしまいました。冷たくてすっきりしたビールは空腹のタコの五臓六腑に沁みわたります。続いて出たオニオンスープ。2か所のコンサートを優先させて、いつもの昼食兼夜食の食事をとらずいたので腹ペコタコです。これも熱くてうまいっ。親切な主任にチップをはずみました。
こうして、今日はかねて念願であったニーチェの故郷と墓を訪れることと、バッハの聖トーマス教会と墓を詣でることが実現し、ライプチヒ滞在の大きな目的を果たせました。そして聖トーマス教会のオルガンと合唱の夕べのコンサートを聴くこともできて幸せ!。更に、素晴らしい弦楽四重奏を真ん前で楽しみ、さらにさらにゲーテのファウストゆかりのケラーでおいしいビールとオニオンスープを楽しめるなんて、天気も良くて大満足、最高の一日でした)^o^(
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