2012年7月26日木曜日

パイプの楽しみⅣ GERT HOLBEK・MEERSCHAUMなど

ホルベックのジュビリータイプのボウル上部分

美しいホルベック・ジュビリーのストレートグレイン

 これまで3回パイプについて書いてきました。特にGERT・HOLBEKのパイプの素晴らしさについて、昔に戻って書いてみました。世界から思わぬ多くの愛好者のアクセスをいただき、パイプの人気の高さに驚きました。そこで40年前に戻って、再度パイプへの情熱をみなさんと共有したいと思い書き続けています。

 そこで今回はステムが折れていたため修理に出していたANTIQUE・MEERSCHAUM(メシャム・海泡石)が仕上がってきましたので、このパイプについて書いてみたいと思います。
鷲がボウルをつかんだところをイメージした作行きです。ヤニの染みこみ方から推測すると、やはり100年ないしはそれ以上の時間が経過しているのではないかと思います。折れた原因は2年ほど前にこの作品を所有する骨董業者さんが興味を持つ人に見せたら、ステムを強く回したので、ステムがねじれて折れたということです。

 そこで折れる前から欲しがっていたいたタコのことを思い出して、特に安く譲ってくれたのです。そこで陶磁器の修復師としてタコが日ごろ敬愛する音楽好きのあの松田さんに頼んだのです。陶磁器の修復専門家ですので、パイプの修復は初めてで、しぶってましたがタコの熱意に負けて引き受けてくれました。条件は期間を設定しないことで、自由にやってもらいました。漆直しですから時間がかかる上に、付ける素材がはっきりわからないので試行錯誤で直すほかにやりようがないみたいです。でもこれ以上は期待できないというくらいに素晴らしく直りました。

 タコは現在、「パイプの楽しみⅠ」で紹介した1895年のホールマーク入りビリヤード型のMEERSCHAUMパイプと、Ⅱで掲載したハムレットに登場する「ヨリックの頭蓋骨を持つハムレットの手」のMEERSCHAUMパイプと、本日ご紹介する「鷲の手」のMEERSCHAUMパイプと「編み物をする娘」のMEERSCHAUMパイプの4点を持っています。すべてANTIQUEでヤニの染み込みが素晴らしく美しいものです。

 いつもメシャムのパイプ作品に感動するのは、過去の所有者がとても大切に使ってきたことです。とくにⅠのビリヤードのメシャムにそれを感じますし。型の入れ物に入ってますが保存が完璧で最高の状態です。おそらく手袋をして吸うか、セーム皮に包まれて吸われ続けたのだと思います。Ⅱの「ヨリックの頭蓋骨を持つハムレットの手」にも同じ思いをもちます。この作品はさらに細かい彫刻がなされ、完成度のきわめて高いものです。壊されずに残ったことが奇跡みたいなパイプです。先のこの「鷲の足」パイプのように、メシャムは壊れやすいやわらかい素材に細かい彫刻が施されているから、なおさら大切にあつかうことが重要なのです。

ビリヤード型メシャム・パイプとケース
ヨリックの頭蓋骨を持つハムレットの手・タールの染み込みが美しい。

細かい彫刻にタールの染み込みが素晴らしい「鷲の手」メシャム・パイプ

見事な金直し(マウスピースの下部)


2012年7月7日土曜日

長良川の絶品「鮎ランチ」

 今年の4月から中日新聞文化センターの岐阜教室で「楽しい骨董入門講座」を新たに担当しています。岐阜は室町守護職の土岐氏が治めていた歴史ある街です。岐阜城は町を見下ろす山城の代表のようなすばらしい城で、眺めは抜群。360度のパノラマで、濃尾平野はすべて見晴らすことができます。この城は戦国時代には、美濃を領有した土岐氏から斎藤道三の居城となり、さらに信長の手に落ちました。国盗り物語の舞台として有名です。その歴史の舞台に毎月1回行けるのは歴史好きのタコとしては非常に楽しみなのです。現在16名の生徒さんたちが通ってきてくれています。


岐阜・中日文化センターのクラスの皆様と
 岐阜は云わずと知れた「鮎」の名産地。、長良川の鵜飼いは全国的に有名で、おいしく食べさせてくれる店が何軒かあります。私は名古屋の同じく中日文化センター栄教室では7年前から講師をさせていただいてますので、昨年は足を伸ばして岐阜にやってきました。その折に見つけたお店が良かったので、また今年も寄らせてもらいました。「うお惣」というお店で、お父さんと息子さんがやっているお店です。(下記連絡先)


ランチ、とても素晴らしいです。写真でも十分わかりますよね~。6月7日でしたので、若鮎3尾の塩焼きをお願いしました。写真のように、見ただけでも美味しそうな焼き上がりです。タコはたまらず頭からガブリといただきました。香ばしくて、塩味が好きなタコにも程よくて、思わず「あ~、うまいな~!」と言葉にでてしまいました。3尾頭から尾まですべていただき、付いてきた「鮎雑炊」、これがまた鮎の香りがほんのり、さらとろりとして何とも旨いのです。きけば今の若鮎の時期までは昨年の親鮎を保存しておいて、その親鮎からとったダシが美味しいのでそれを使うそうです。そうするとコクのある雑炊ができるのだそうです。これもすばらしい。さらにフルーツをいただいて、十分に満足。ランチの鮎塩焼き定食2100円。次は、夏過ぎたら親鮎をいただきに行くのが楽しみです。

● 岐阜中日文化センター: http://www.chunichi-culture.com/gifu/
ご興味のある方は、上記ウェブサイトの講座分類の中から「歴史・教養・文学」をクリックし、「たのしい古美術・骨董入門」をご参照ください。

● うお惚(うおそう): http://uosou.net/
住所 〒500-8082 岐阜県岐阜市矢島町1-3
電話 058-262-1875
営業時間 昼(ランチ)  AM11:30~PM2:00 夜 PM5:00~PM9:00定休日 第2 / 第4 / 第5 水曜日
ランチも電話で予約が必要です。 

2012年7月5日木曜日

タコのオーディオ・システム BACHから木村好夫まで



 タコのオーディオ熱については以前書かせていただきましたが、オーディオにかける金額にはキリがありません。聞くところによると8000万円というオーディオセットがあるそうで、それだけお金をかけるなら、素晴らしい本当の演奏会の一番前の席で何百回でも聴けるだろうにと思うのです。その方が本当の音であるわけです。再生装置だけの方向に向かうということは、録音した音が、どれだけ原音に近くなるか、という追求をということなのでしょう。しかしそれは音楽を愛するという方向からはやや外れてゆくのではないかと思います。どう考えても実際のオーケストラや器楽、ピアノの音にはかないません。ただ物故された演奏家の作品をオーディオで再生するという点ではこのオーデオ装置は大変ありがたいのです。それにはせいぜい数十万円、多くても100万くらいで十分かと思います。
 特にオーディオの世界ではかつてこう言われていました。「音の入るところと、出るところに金をかけろ」と。タコもこの言葉にならってレコードのカートリッジとプレーヤー、CDプレーヤー、そして出るところのスピーカーに力を入れました。特にカートリッジ。オルトフォンMC-20とZYXを使っています 。とりわけZYXは精巧な手作りで、かつてのオルトホンでMC-20を開発した日本人技術者による手作りの卓越したカートリッジです。すごくしっかりした音を出してくれます。そして最後に真ん中の部分、すなはちプリメインアンプに真空管アンプを導入することができたのです。古山さんのおかげです。



 ここに掲載したアンプは、以前にこのブログでご紹介したFAL SUPREME-S というすばらしい世界初のフラットスピーカーを独自に開発し、販売している「オーディオおじさん」こと古山磐夫さんから購入したAUDIO SPACEのAS6i です。タコが高校生のとき、中野の北口商店街の真ん中にあった、文化堂というレコード店がラックスの真空管アンプを使って鳴らしているのを聴いて、是非ああいういい音のアンプを使ってみたいものだと夢にみたものです。真空管の、なんとも優しいほのかなオレンジ色の光・・・ しかし真空管アンプは当時の小遣いではとても手のでない代物でした。
 真空管アンプの良さは、髙音域がのびやかで、艶やがあり、バランスが良いところ。特にピアノ、バイオリンのCD、レコードにいいです。古山さんとはスピーカーを入れていただいてからのご縁で、彼のお店でデモ用に使っていたタコ憧れの真空管アンプを最近安く譲っていただけるチャンスに恵まれました。いつもデモで聴いていましたので、音質は迫力があると同時にまろやかな音で満足でした。
 自宅に機材を搬入してセッテイングを終えると、古山さん自身がアソートした様々なジャンルの音楽を入れたデモンストレーション用のCDをかけてチェックします。その選択は、ちょっと懐かしい曲が多いのですが、とても良い音なので、つい聞き入ってしまいます。古山さんもその音色を確かめながら、「イイねぇ~っ!」と満足げにうなります。古山さんの年齢からすると、たぶんクレイジー・ケン・バンドのケンさんより前からこの「イイねぇ~っ」は口癖だったと思います。

 タコの家はマンションですから、あまり大きなスピーカーは必要ありません。オーディオおじさんの発明した世界初のフラットスピーカー FAL SUPREME-S に大満足です。驚くほどナチュラルで歯切れがいい音。ボリュームを上げても音割れしないのです。とくにこのスピーカーでフランス人ピアニスト、フランソワによるショパンのノクターンとベネディッテイ・ミケランジェリのピアノでベートーヴェンのピアノ・コンチエルト5番「皇帝」を聴くのがタコの最大の楽しみです。スピーカーで聴いていて終わると拍手したくなるほど臨場感のあるいい音です。ほれぼれとします。マニアはブランドで買わないで、虚心に音質を確かめて購入して欲しいと思います。このスピーカーはクラッシックから演歌まで何でもOKです。木村好夫のギターも最高、美空ひばりもこんなにいい歌声なんだと再認識。音楽のイメージがまったく変わります。
 先日タカノのフルーツについて書きましたが、その折にディスク・ユニオンで買ったレコード、シベリウスのヴァイオリン協奏曲もこのスピーカーを通すと、大好きなオイストラフのヴァイオリンが本当にすばらしい。冒頭部分を聴いていると、まさに太陽の光のとぼしい北欧の白夜のフィヨルドを航行しているイメージが彷彿としてくるのです。

DATA
プレーヤー    THORENS TD-226 ELECTORONIC ・ DOUBLE ARMS
カートリッジ    ZYX  ・ ORTPHONE MC-20 
アーム       SME  ・ THORENS 
プリメインアンプ AUDIO SPACE AS6i
スピーカー     FAL SUPREME-S

2012年6月14日木曜日

タカノの宮崎マンゴー・パフェ!Woody Allen ミッドナイト・イン・パリ


先日、久しぶりにウッディー・アレンWoody Allenの映画を観たくなり、仕事が早めに終わったので新宿に行きました。「ミッドナイト・イン・パリ」Midnight in Paris最終回にはまだ時間があったので、ディスク・ユニオンにもちょっと顔出して、さらにタカノのフルーツ・パーラーに寄り道。メニューを開くと、彩りも鮮やかなフルーツの写真が並び、ちょっと迷いましたが、旬の「宮崎マンゴ-・パフェ」に決めました。これは、肉厚な国産のマンゴーをたっぷりと使っているので、なかなかの豪華パフェです。年に数回のタコの贅沢タイム。これがテレビで見たことのある、「太陽のたまご」とか言う種類かな?繊維など全く感じさせない、滑らかな舌触り!濃厚な天然の甘さです。完熟!マンゴー好きのタコにはたまりません!フルーツはどれも身体に良いのですが、マンゴーは特にビタミンA・B・C他βカロテン、葉酸が豊富といわれます。パフェの下の方にはタコの好きなアイスクリームがこれまたたっぷり入ってます。

さて、今上映中の「テルマエ・ロマエ」もそうですが、「ミッドナイト・イン・パリ」もタイムスリップものです。とは言え、ゴールデングローブ(コメディー・ミュージカル部門)とアカデミー賞の脚本賞を受賞しているだけあって、ひと味洗練されています。絵はがきか観光ガイドに見るようなコテコテのパリの名所の風景を、それにピッタリの音楽と共に流れるように延々と映し出す所から始まるのですが、これが悪くない。というか、楽しいです。ウッディー・アレンお得意のニューヨークが舞台の作品同様、最初からなにかウキウキした気分にさせてくれます。作家志望の主人公が憧れる、1920年代、レ・ザネ・フォルLes Annees Follesと呼ばれた熱狂の時代のパリで、フィッツジェラルド夫妻やヘミングウェイ、ピカソ等と戯れ、ガートルード・スタインGertrude Steinに原稿を批評してもらう。更に、華やかなりしベルエポックBelle Epoqueまでタイムスリップし、ムーランルージュではフレンチカンカンを楽しむロートレックToulouse-Lautrec、ゴーギャンGauguinとまで知り合いに・・・。面倒なしがらみのある現実世界と、憧れの時代を行き来する主人公の人間関係がおもしろかったです。優柔不断で、自他共に認める表面的な人生に悩むナイーブな主人公・ギルに対し、自他共に認める「文化人」のポールの厚顔な知ったかぶりや現実主義の婚約者の突っ込みに、ウッディー・アレンのユーモラスな風刺が生きています。

ロマンポランスキーRoman Polanskiの「戦場のピアニストThe Pianist」でアカデミー主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブローディーAdrien Brodyが、若きダリSalvador Dali役で出てきたのも似ていてとてもおかしかったです。キャシー・ベイツCathy Batesもガートルード・スタインにぴったりでした。この人は、何を演じてもはまります。サルコジの奥様、カーラ・ブルーニCarla Bruniも撮影当時はまだ大統領夫人だったと思われますが、さりげないジーンズ姿がシックでした。エディット・ピアフを演じてフランス人としては史上2人目のアカデミー主演女優賞を獲得したマリオン・コティヤールMarion Cotillardは、この映画でもアーティスト達のミューズ役を活き活きと演じていました。彼女には、なにかノスタルジアを呼び起こすような雰囲気があります。そして、主演のオーウェン・ウィルソンOwen Wilsonも軽いけど繊細な役にはまっていました。なんとも、ウッディー・アレンが少し乗り移ったような感じでした。昔なら、ウッディー・アレン本人が演じた役だろうな、と思って見ていたのですが、キャスティングがとてもいいです。

個性的な俳優達が、個性的な歴史上の有名人を楽しみながらもしっかりと演じているのが見どころです。あれは、ジョセフィン・ベーカーかな、とか、おっ、コール・ポーター(笑)、モジリアーニのことを言ってるのだな、などと思いながら観る楽しさがあります。

デイスク・ユニオンではたまたまロシア盤ユーロデイスクの中古レコードでシベリウスSibeliusのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン演奏はダヴィッド・オイストラフDavid Fiodorovich Oistrakh)を買いました。この曲は出だしが特に大切で、ここを聴いていると静かな白夜のフィヨルドを船上から観ているイメージが眼に浮かぶのです。また北欧に行ってみたいなぁと思います。オイストラフの演奏はこの曲にピッタリです。やはり北国の作曲家の曲には北国の演奏家がいい。オイストラフはタコの好きなヴァイオリニストの一人で、これはすばらしい演奏です。
美味しい物をいただき、いい映画を鑑賞して、気に入った音楽を聴く。タコうっとりの、満足できる夜でした。

2012年6月6日水曜日

タコの骨壺 加山雄三さんの「アトリエde加山」


 タコは昨日6月5日のBSフジテレビの番組「アトリエde加山」陶芸特集に出演しました。加山雄三さんと言えば、ヨットのイメージがありますが、多趣味でいらして、この番組では「エレキ」、「鉄道模型」など、毎回異なる分野にフォーカスを当てているようです。加山さんを中心に、色々なマニアやコレクターの方も登場して、様々な趣味の世界を楽しく紹介しています。タコが出演した回は、「現代陶芸」がテーマでした。陶芸ブームの興りについて解説するように、との依頼でしたので、段階を分けてお話ししました。

 1930年からはじまる陶芸ブーム。そのさきがけは荒川豊蔵による志野を中心とした美濃陶の発見でした。発掘ブームという方がぴったりかもしれませんが、全国から古陶磁器マニアが押し寄せて一大ブームが起きました。やきものの再認識がなされたと言えます。その後、永仁の壺贋作事件が世を騒がせました。これは鎌倉時代の永仁年間(1292~1298)の制作であることが壺に彫られた、貴重な作品ということで「重要文化財」に指定されました。ところがその後、その壺(正確には瓶子)は贋作であるということが判明して、作った人間と、重要文化財に指定したことをめぐって大きなスキャンダル問題に発展しました。ここで一番のポイントは専門家をも欺いて、美術品の一ジャンルである古陶磁器とされるくほどの、しかも重要文化財に指定されるほどの陶芸の技術が現代にもあるんだという、いわば驚きと技量への再認識がなされたわけです。そこでひとつのブームになった。その後、高度成長時代のインフレ経済とバブル経済のもとで、いわば不動産や株式投資と同じように、有名な作家の焼きものを買い占める投機が行われました。その高騰はあまり有名でない陶芸家の作品にまで及びました。その結果としてのバブル崩壊。そして団塊の世代がリタイアした現在、新たな趣味として最適となったのが現在の「陶芸」ブームの流れです。元首相の細川護煕さんが陶芸に打ち込んでいることも、そうした流れを大きくしたかも知れません。 一応そんな話をしまして、最後に出したのが、自分用につくった骨壺です。平成11年に作ったことが蓋の裏に書かれておりますから、今からほぼ13年前になります。

 タコが学院長をしている日本骨董学院ではそのころ陶芸教室も開催していました。知人の陶芸家に講師として来てもらい、みなさんを指導してもらいました。いくつか壺とか小物を作っていると、何か大きなものにチャレンジしてみたいと思うようになり、自分の骨壺を作ろうという発想になりました。人間はいつ死ぬかわからないということもあったと思います。ただ一般的に売られている、ホーローの白い冷たい骨壺にだけは入りたくないなぁと思っていました。
 そこでいろいろデザインを考えました。真ん中には阿弥陀如来のシンボルであるキリークという梵字を入れ、周辺には般若心経を全文彫り込むことにしました。
一日かかって壺自体を作り、心を込めて経文を彫り込むのにもまた一日。乾燥させ、登り窯を持つ知人の陶芸家に渡しました。
 そうして待つこと3週間、やっとできてきました。信楽の土と赤松の薪による登り窯で焼成したので、ほぼ考えた通りに、ちょうどいい感じにできあがりました。


BSフジ「アトリエde加山」 : http://www.bsfuji.tv/top/pub/atelier.html
日本骨董学院公式サイト: http://www.kottou-gakuin.com/

古代史の故郷・近江の旅



 5月末に、日本骨董学院創立18周年を記念して、会員の皆さんと旅行に行きました。壬申の乱を中心とする古代史の舞台、近江京と668年天智天皇創建の崇福寺を訪ねました。近江にありながら奈良十大寺の一つと数えられた重要な史跡です。平安時代の落雷で焼失して礎石だけになっている三重塔跡からは、国宝に指定された緑色のガラスの舎利容器が出土しています。今は木立に囲まれたこの静かな寺跡に立ち、古代からの歴史にしばし思いを馳せました。そばには、百穴古墳群があったり、鎌倉時代の阿弥陀様の石彫大仏があったりで、みどころの多い場所でした。決して平坦な道のりではないので、ちょっとしたハイキングなみの運動量でした。御蔭でお腹も空いたところで、夕食を食べに長浜へ。名物・近江牛のステーキやしゃぶしゃぶに舌鼓を打ちました。

向源寺
 翌日は、向源寺の国宝十一面観音を拝観しました。本来なら、限られた公開日に、薄暗い御堂の奥深くに浮かび上がる御姿をそっと見上げて拝むにふさわしい観音様です。しかし、国宝に指定されたことで、御傍から拝見させていただけるようになっています。後ろまでまわってじっくり鑑賞させていただくことができます。本当に素晴らしい観音様です。様々な時代の波を超えて、大変な思いで守り抜かれただけのことはあります。今こうしてゆっくりと拝顔できることを、有り難く、幸せに感じました。ご住職の丁寧な解説でこの観音様の時代背景、見どころがわかり、皆さんその異国情緒あふれるお顔の美しさに見とれていました。今回は、7歳のお嬢ちゃまも参加してましたが、「スゴイ!」と素直に感動していたのも印象的です。


  百済寺の鐘楼では、皆さん思い思いに願いを込めて鐘を撞きました。

百済寺からの素晴らしい眺望
    「天下遠望の名園」とされる庭園本坊の大きな池の前に座って、のんびりと庭園の美しさを楽しみました。

大きな池には、見事な鯉がたくさん!
 西明寺では、自分の干支の十二神将を拝むと御利益があるとのこと。係の方の細部にまで及ぶ説明が実におもしろく、皆さんとても楽しまれたようです。どこも清々しい新緑が広がり、心が洗われるような気分でした。お天気にも恵まれた、爽やかな5月の旅でした。


日本骨董学院公式サイト: http://www.kottou-gakuin.com/

2012年5月9日水曜日

5月の石神井公園散策 バッハ(J・S・BACH)平均律  カ-ル・リヒター(Karl Richter) グレン・グールドGlen Gould カフカ Franz Kafka



    

 今年の5月のゴールデンウィークは、9連休取れた方も多かったようですが、タコはほとんど普段と変わらぬペースで働いていましたが、数日お休みがとれました。連続してお休みが取れなかったので、遠出はせず、時間の空いた時にはのんびりと骨休めするようにしました。


 連日の雨の中、貴重な晴れ間には久しぶりに石神井公園へ散歩にくり出しました。ここは太田道灌によって15世紀後半に滅ぼされた豊島一族の戦国時代の古城址で、タコの大好きな場所のひとつです。土日こそ人出が多くなりましたが、平日はとても静かです。写真にあるように連休の合間でも人も少なく、ゆっくり散策できました。茶店もご覧のとおり人影もなく、おなかもすいてきたのでカレーライスを注文してゆっくりいただきました。昔のままのカレーライス!あーあ、ノンビリできて、いいなァー!!
  前回この公園についてブログに投稿した時の写真は1月の寒空の下で撮ったものでしたが、今回は辺り一面の新緑。 連日の雨に洗われて、ツヤツヤとした若草色に迎えられ、子供のころから何度ここに来たかわからないほどですが、いつもなにか新たな、じわっとくる感動がある場所なのです。
 タコは古美術品を扱いますが、美術でも映画でも音楽でも、いつ観ても聴いても新たな感動、新しい発見があるということが、その作品の本来の力であり、魅力なのだと思います。1万年前の縄文土器に洋画家の岡本太郎が感動して、自分の芸術の原点としたように、まさにその作品の持つエネルギーがわれわれを感動させ、驚かせるのです。美術はこんなにはるか彼方の時空を超えて人の魂に訴えることができるのですから、すごいことですね。  
  ポケットからiPodを出して大好きなカ-ル・リヒター(Karl Richter)のチェンバロHarpsichord/Cembalo/Clavecin/ClavicembaloでバッハJohann Sebastian Bachの「平均律」The well-tempered Clavierを選び、聴くことにしました。もう30年も昔にスイス、インターラーケン(Interlaken)から登山鉄道に乗り、アルプスの山々を見ながらカセットテープで聴いた曲です。自然にとても合う曲です。グレン・グールドGlen Gouldの「平均律」もなかなかいいです。石神井公園の水辺や泉のほとりを歩いていると惑星ソラリス("Solaris" 1972 )の冒頭の水草がゆらゆらとたゆとう美しい場面を思い出します。バックミュージックはやはりバッハのオルガン曲で、コラールプレリュードBWV639番(J. S. Bach, Choral-Prelude "Ich Ruf Zu Dir, Herr Jesu Christ" BWV639)でした。これを聴くと、いつもあの映画の冒頭部分の映像とアンドレイ・タルコフスキー監督の水の思想を思い浮かべてしまいます。「ソラリス」はすべての面ですばらしい映画です。 タコがこれまでに最も感銘を受けた映画作品は、黒沢明監督(Akira Kurosawa)の「蜘蛛巣城」"Throne of Blood"1957と「デルス・ウザーラ」"Dersu Uzala"1975、そしてタルコフスキー監督(Andrei Arsenyevich Tarkovsky)の「惑星ソラリス」"Solaris"1972の3作品です。それにあえて付け加えるとすれば、オーソン・ウエルズ監督(George Orson Welles)のカフカFranz Kafka「審判」"The Trial"1962でしょうか。
 そんな懐かしいことを考えながら石神井公園の散策を終えました。「蜘蛛巣城」はタコが10歳の時、「審判」は高校生の時、カフカの文学に熱中していた時に観ました。「惑星ソラリス」は大学時代に岩波映画で観て、とても感動しました。そして「デルス・ウザーラ」は社会人になってフィルム・センターの黒澤映画連続映写会で鑑賞しました。これも黒沢監督の代表作といってもいい映画です。多くの点で啓発された思い出の映画ばかりです。
 石神井城址も戦国時代の「兵どもが夢の跡」、まさに「蜘蛛巣城」の映画の時代背景と同じイメージの城跡の一環です。